材料の知識 - 鋼

純銅の熱伝導度は軟鋼の約8倍あります。そこで、加えられた溶接熱が急速に母材側に拡散してしまうので、溶接部のなじみが悪くなってしまいます。また融合不良やスラグ巻込み等の欠陥が発生しやすくなるという特徴があります。
したがって、十分な溶込みを得るためにはかなりの予熱が必要となる。また熱影響部の幅も著しく大きくなる。

銅の特徴

加工性・溶接性に特徴があり、一般的に難易度が高い加工材の1つとして考えられている。
粘り気が高く、融点が1000度前後になる。熱伝導性が鉄と比べ5倍以上あるため、溶接すると熱が急速に母材に拡散し、接合不良など溶接欠陥が発生する原因となる。膨張係数も大きいため、溶接歪みも生じやすい。
機械加工では、切削油の選定を間違うと、銅の黒みがかった赤色が、真っ黒になってしまうため、注意が必要。
溶接する上では、無酸素銅のC1020が最適である。

性質としては、電気伝導性は鉄の6倍と圧倒的に高い。

純銅(ピュアカッパー)の特徴

C1020

銅(Cu)99.96%以上含む高純度銅で、電気および熱の伝導性が非常に高い。ろう付け性、深絞り加工性にも優れている。また、溶接性、耐食性、耐候性も非常に良好である。この銅は、含有酸素量が0.001%以下であるため、「水素脆化」のリスクがほとんどなく、信頼性の高い材料として広く認識されている。これにより、電気機器や化学工業用途、特に高温・高圧環境下での使用が求められる応用に適している。

「水素脆化」とは、高温環境下で銅中の酸化銅が還元される際に水蒸気が発生し、その内部圧力により微細なクラックが生成され、材料が脆化する現象である。この現象は、高純度の銅材において、酸素含有量を極限まで低減することによって回避される。

 

C1100

銅(Cu)99.90%以上、酸素(O2)0.02~0.05%を含む材料は、卓越した電気伝導性および熱伝導性(伝導率はほぼ100%)を持ち、さらに優れた塑性加工性、耐食性、耐候性を有する。この特性により、電線や電気機器用の材料として広く使用されている。ただし、「水素脆化」に注意する必要がある。「水素脆化」とは、還元性のガス環境下で400℃以上に加熱されると、銅中の酸化銅が還元されて水蒸気が発生し、その内部圧力により微細なクラックが生成され、銅が脆化する現象を指す。この現象は、特に高温環境下での使用時に考慮すべき重要なポイントである。

 

C1220

C1220は、銅(Cu)を99.90%以上、りん(P)を0.015~0.040%含む高純度の銅合金である。この材料は、酸素含有量が非常に少ないため、高温環境下でも水素脆化が発生するリスクがほとんどない。これは、りんの添加によって酸化銅の形成が抑制されるためである。その結果、C1220は優れた耐食性と耐候性を持ち、長期間にわたって腐食や環境劣化に対する耐久性を発揮する。
さらに、この合金は高い塑性加工性を持ち、深絞り加工などの複雑な加工にも対応可能である。これにより、さまざまな形状に成形できるため、用途が広がる。また、熱伝導性も非常に高く、りんの添加によって熱伝導率は約80%に低下するものの、依然として効果的な熱伝導を保っている。
これらの特性により、C1220は風呂釜や屋根板などの用途に広く使用されている。風呂釜では、優れた耐食性と熱伝導性により高い信頼性を提供し、屋根板では、耐候性と加工性の高さから長期間にわたって安定した性能を発揮する。

黄銅(ブラス)の特徴

C2801

一般的に”真鍮”(しんちゅう)と呼ばれている素材の1種である。他の銅合金と比較し、主成分が銅であるが、次に、亜鉛の含有量が40%含まれる。熱伝導性などの機能面は、純銅と比べると落ちるが、絞り加工の加工性が良く、美しい。耐食性と加工性の高さから、住宅や産業用途の配管、バルブ、フィッティングに広く使用される。
亜鉛が含まれることで、溶接性は悪い。

ネーバル黄銅の特徴

C4621

黄銅に錫(スズ)を添加した素材である。黄銅と比較し、硬度強度は増加するが、曲げなどの加工性は悪くなる。鋳造で使用されることが多い。耐海水性に優れており、船舶部品、工業用途の水回り部品に使用されている。

りん青銅(ブロンズ)の特徴

C5191

純銅に錫を添加した上にりんを加えることで、青銅内部に含まれる酸化銅を脱酸した金属である。
冷間加工性が良好で、引抜き、圧延、打抜き加工など、さまざまな加工方法に適している。また、熱間加工にも対応可能。耐摩耗性が向上しており、摺動部品、摩耗に対して高い耐久性が求められる用途に適している。耐食性も優れている。特に、高い耐摩耗性と耐疲労性が求められる用途において、その価値が発揮されるため、ばね材、ねじ、軸受けに使用されている。
他の銅と接合性質が違うため、温度管理がより重要になる素材である。

アルミニウム青銅(アームズ・ブロンズ)の特徴

C6161

アルミと鉄、ニッケルの含有量が多い素材になる。強度があり、耐摩耗性、耐食性に優れている。化学工業用部品、船舶部品、機械部品などの用途で使用される。船のスクリューにされたり、色が似ていることから金の代用品として装飾品などに用いられる。
溶接性では、黄銅はハンダ付けしやすいのに対して、アルミニウム青銅はハンダ付けが出来ない。戦前の10銭、5銭硬貨でも使用されていた。

白銅(キュプロニッケル)の特徴

C7060

ニッケルを10~30%含む銅合金である。ニッケルの含有量が増加するにつれ赤みがかった色から銀白色へと変わる。この合金は純銅と異なり,熱伝導率はそれほど高くなく,炭素鋼と同程度であるため溶接時の火力は若干抑えられる。鉄と接合する際は、モネルなどの緩衝素材を間に入れることが重要である。様々な耐食性、特に耐海水性に優れた金属で比較的高温の使用にも適している。

砲金の特徴

BC6

銅(Cu)83.0〜87.0%、鉛(Pb)4.0〜6.0%、すず(Sn)4.0〜6.0%、亜鉛(Zn)4.0〜6.0%を含む。砲金は、1〜7種
まであり、鋳造方法は、連続鋳造です。用途としては、耐圧性、耐磨耗性、被削性が良く、例えば、一般バルブコック類、軸受、
スリープ、ブッシュその他機械部品に使われております。

ベリリウム銅合金の特徴

銅に0.5~3%のベリリウムを加えた銅合金である。ベリリウム銅は高い強度を持ち、また非磁性であり火花が出ない特性を持っている。
さらに、金属加工、成形、機械加工に向いた特性も持っており、危険な環境下での工具、楽器、精密測定機器、弾丸、宇宙開発用の材料など、各種の応用に用いられる。
ベリリウム銅は、銅をベースとした合金の中で最高の強度(~1400MPa)を誇っている。
ベリリウム銅の道具は高価で強度・耐久性にも劣るが、危険な環境で使えるメリットはそれら以上に大きい。

クローム銅の特徴

銅に0.7~1.4%のクロームを加えた析出硬化型の合金である。高温でも耐摩擦性が大きい。
耐熱性、導電性、熱伝導性、耐食性に優れている。
スポット溶接の電極材として用いられ、高温度において長時間使用しても硬度、抗張力の低下が少なく、耐磨耗性・耐疲労性に優れた材料である。

【豆知識】銅の産地は?

世界最大の銅の産地は、チリだが、中国やロシアもそれに追随する産出量になる。2022年以降、西側諸国と東側諸国との貿易摩擦の影響により今後さらに高騰する可能性がある。
2023年におけるチリの銅生産量は約500万メトリックトンで、これは世界全体の銅生産量の約23%を占めている​​​ (INN)​。チリは長年にわたり、世界最大の銅生産国としての地位を維持しており、エスコンディダ鉱山やコラウアシ鉱山などの世界最大級の銅鉱山が主要な生産拠点となっている。このため、チリは世界の銅供給において極めて重要な役割を果たしている。
一方、中国とロシアを合わせると、世界の銅生産量の約11.8%を占めている​​​。これにより、中国とロシアもまた銅の主要生産国であり、特に中国は大規模な銅消費国となっている。